世界の果てで、君との堕落恋愛。
だけどそんな謎の気まずさは時間が解決してくれた。

今では涼太くんのことがとても大切で、大好きな家族の1員だって思ってる。

わたしが知らない間にいかがわしい行為をしていた両親に向けていた邪険な感情を殺してくれたのは、涼太くんが生まれた頃に見せた、あの純粋無垢な笑顔。


「おねえ、ちゃん……? おかあさん? どうしたの」


知らされた過酷な事実に、私まで泣きそうになっていたところを、その不安そうなか細い声が引き戻した。


……泣いちゃダメだ。

これ以上、この子を不安にさせたらいけない。


わたしがちゃんと、しっかりしなきゃ……っ。

「どうもしてないよ。安心して、涼太くん。お母さんはただ……ちょっとだけ疲れちゃったみたい。お母さんを休ませてくるから、ここで1人で待ってられるかな?」


精いっぱいの笑顔を作って、涼太くんの目線の高さまでしゃがみ込む。

小さな肩に手を添えて、安心させるように何度も優しく背中を撫でた。


「……うん! 僕、いっつも1人で寝れてるもん! だから大丈夫!」


そのあどけない笑顔に、また胸がきゅうっと締まって、苦しくなる。


ああ、涼太くんはまだこんなに幼いのに、毎日真っ白な病室で1人で寝てるんだって思うと、やるせない気持ちになる。


5歳なりに自分の病気を理解していて、だからこそ不安なことも沢山あるだろうに、そんな弱音1つ吐かない。

お母さんと寝る。家族と一緒に、温かいベッドで眠りに落ちる。
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