世界の果てで、君との堕落恋愛。
小さい子みんなが当たり前にしていることを、涼太くんはできない。

本当は、涼太くんに寂しい思いをさせないためにずっと病室にいてあげたいけれど、あいにく面会時間は限られている。


「そっか……。やっぱり涼太くんは、強いね」


小児がんには色々と種類があるけれど、涼太くんはその中の“脳腫瘍”を患っている。


脳腫瘍が引き起こす機能異常には、頭痛やめまい、そして吐き気や手足の麻痺、感覚障害、視力の喪失などがある。

わたしにはどれも難しくて、完全には理解しがたい涼太くんの病気。


脳腫瘍の摘出は何度か行ってきた。だけど、どうしても摘出が困難な場所に大きな爆弾のような脳腫瘍があると山田先生は言っていた。


……腫瘍を取り除いても、またいつできるか分からない。船に揺られ、地面に足をつけられない毎日を送っているような、そんな恐怖。


隣で苦しむ涼太くんを、わたしは横で見守っていることしかできない。涼太くんの病気を、わたしは治せない。

……このもどかしさは、どこでどうやって解消すればいいのだろう。


「お母さん、少し外に出て気分転換しよっか」


涼太くんの肩をトントンと叩いて立ち上がった後、ベッド脇の椅子に座り込んで泣いていたお母さんにそう声をかけて、ゆっくりと近づく。

わたしの呼びかけにお母さんは涙を流しながら力なく頷いて、椅子から立ち上がった。
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