世界の果てで、君との堕落恋愛。
それとも───

1番否定されたくなかった人に否定されてしまったから、だろうか。

わたしのしていることは、お母さんのためになるものだと、当然のようにそう思ってきた。

でも、それはわたしの行き過ぎた勘違いだった。


『今まで涼香が振り込んできたお金……? そんなの使ったこと1度もないわよ。それに、あなた匿名で振込していたでしょ。……そんな、誰が送ってくるのかも分からない大金なんて、怖くて使えるはずないでしょう』


病院の屋上でお母さんに言われた言葉。

それを聞いた瞬間、今まで積み上げてきた努力の結晶が一気に崩れ落ちる音を間近で聞いたんだ。


「はぁ……」


小さく吐き出されたため息は、誰にも聞かれることなく、満月の光の中へと溶けていく。

瞼の上に象のように大きくて重すぎる何かが乗っているみたいだ。

重くなって、それに耐えきれず、閉じていく。

もう開けられない。

ダルい眠気に襲われる手前、


───『刀利……? お前、すんげえ名字してんな』


そう言って上品に笑う、あの人の声を聴いた気がした。
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