世界の果てで、君との堕落恋愛。
「別にどーもしないけど? おれ、そーいうの上手く躱せるからね」

「そういう問題じゃ……っ、」

「ま、安心しなよ。君には手なんか出さないから」

「それは、……助かります。週刊文春に追われでもしたら、菅生さん大変そうですし……」

「なぁに、おれの心配してくれてたの?」


急に表情筋を緩めたかと思えば、切れ長の瞳を垂れさせて笑うから自分の目を疑った。

───ウソだ。


菅生さんがわたし相手にそんな甘い顔をするわけがない。

こんなにもとろけるような甘い笑みを、嬉しそうな表情をわたしなんかに見せてどうなるというのだ。

何のメリットも生み出さないのに。

それなのに、今わたしの目の前に立つ彼は明らかに上機嫌だ。


「べ、別に心配なんか……っ、わたし、もう行きます!」


そう言うわたしの顔は真っ赤だったと思う。

彼の横を通り過ぎたのと同時に、その形の良い艶やかな唇が上に吊り上がったのをわたしは見過ごしていた。


 ◻
  ❏


学校に着いて、まだ誰もいない教室に足を踏み入れる。

廊下側の列の1番後ろの席に鞄を置いて、そこから教材を取り出す。

リュックの中にあるパンに目が止まって、そういえば買ったんだったと思い出し、手に取る。
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