世界の果てで、君との堕落恋愛。
賀上くんの両脇に立つ2人の男子の内の1人が丁寧に頭を下げ、もう1人がお礼しながら手を合わせ、そんなお願いまでした。


鬼北とは、わたしたち5組の担任の山北先生を指す性の悪いあだ名みたいなものだ。

クラスメイトのほとんどがそのあだ名を口にしている。


先生可哀想だなと思うけど、1人の女子生徒がティッシュを忘れたくらいで泣かせるまで説教するような担任なんだから、そう言われても仕方ないとも思っている。


「はい。もちろん山北先生には言いません。だから安心してもらって大丈夫です……」


早く何処かに行ってくれ〜と心の中で念じながら、わたしはそう小さく答える。


「ところでさ、オレずっと思ってたんですけど、その長い前髪とかでっけぇメガネがあると前見えづらくないっすか?」


……だけど、中々わたしの席から離れてくれない3人組。

わたしにぐいっと自分の顔を近づけて、無遠慮にそんなことを聞いてきたのは、わたしから見て賀上くんの右隣りに立つ江田(えだ)くんだ。


「いえ、別に……」


ここまで無愛想な反応をしているのに、3人は嫌な顔1つしない。それが今のわたしとしてはマズかった。

学校では、なるべく目立たないように過ごしたいのに……。

もうすぐで沢山の生徒が登校してくるであろう時間帯になる。


他のクラスメイトが教室に入ってきて、クラスの中心人物であるような賀上くんを始めとするこの3人に囲まれたままでは、きっと自然と注目を集めてしまうだろう。
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