世界の果てで、君との堕落恋愛。
「お〜い、刀利さーん? 急に笑ったりしてどうしたの?」


澤田(さわだ)くんがわたしの顔の前で手を振る。


「ああ、なんでもないです。それより、早く教材とかの準備をした方が良いのでは……?」

「あー、確かにそうだな! お前ら、ずっと刀利さんの席にいても迷惑だろうし、1限目の準備しようぜ」


賀上くん、ナイスです……!

ほっと胸を撫で下ろし、わたしは思わず小さな笑みを零した。


「ちょ、賀上ぃ〜! 真面目かよ! オレ1限目のことなんて考えたくなーい」

「僕も江田に同感〜」


そんなわたしを、まだ何か喋っている2人の背中をぐいぐい押してわたしの席から離れて行ったはずの賀上くんがじっと見つめていたことになんて、当然気づきもしなかった。


 ◻
  ❏


淡々とした時間が流れ、ホームルームもすぐに終わって帰りの挨拶を交わす。

教材を学生鞄やリュックに小分けして入れて、帰る準備を済ませたわたしは、足早に教室を後にした。

正門を抜け、その先の横断歩道を渡るために赤信号を待つ。

そして唐突に思い出す。

過ぎる時間が早く感じたのも、まだ空がこんなにも明るいのにも、ちゃんと理由があった。


────…ああ、今日は土曜日だ。
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