世界の果てで、君との堕落恋愛。
それだけは避けたかったわたしだけど、お医者様の言うことには逆らえない。

涼太くんの体を想うなら、それに従うのが正解だ。


「ごめんね涼太くん……。山田先生がね、もう甘い物は食べちゃいけないって」

「えぇ〜〜!! なんで、どうして……っ!?」

「どうしてもなの。血糖値っていうものが高くなるとね、涼太くんの体が今よりもっと苦しくなっちゃうんだ」


涼太くんの目線に合わせ、そう諭す。


「涼太、苦しくならないよ。だから甘い物食べたって平気……っ」

「涼太くん。今も酷い頭痛に苦しんでるよね。その上血糖値が高くなることで疲れやすくなったり、体重が落ちたりしたらどうなると思う?」

「ぇ……?」


涼太くんの両手を握って、優しく問いかける。


「涼太くんは今自分の頭の中にある脳腫瘍と戦えなくなるでしょ」

「……っ」


まだ5歳の男の子にこんな難しい話をするべきでないということくらい分かってる。


「お姉ちゃん、涼太くんには長生きしてほしいんだ。……小児がんが治って、退院して、そして側でずっと明るい笑顔を見せてほしいの」
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