【短編集】異世界恋愛 (by降矢)
「君を選ばずにおいて正解だった。心からそう思うよ」
彼は言い放った。光さす宮殿の渡り廊下で。
彼の名はクリストフ・リリェバリ。三大勇者一族リリェバリ公爵家の嫡子で現在22歳。勇者の証である上下白の軍服を見事なまでに着こなしている。
しっかりと固められたブロンドの髪。アイスブルーの瞳は自信に満ち満ちていて見方によっては不遜とも取れる。
「……申し訳ございません」
エレノアは弁解することなく深々と頭を下げた。白いカソックの裾にやわらかなミルキーブロンドの髪が触れる。
「返す言葉もありません」
(わたくしは気付いて差し上げられなかった。クリストフ様はずっと助けを、安らぎを求めていたというのに)
彼もまた使命に生きているのだと、そう思い込んでしまったのだ。
クリストフは辛抱強く待ち続けた。期間にして5年だ。繰り返される期待と落胆。彼が受けた苦痛は想像に難くない。
「ご多幸をお祈り申し上げます」
クリストフの傍らに立つ、白いカソック姿の女性に目を向ける。彼女の名はシャロン・レイス。クリストフが自らの手で選んだ新しい婚約者だ。
三大聖教一族レイス侯爵家の次女。聖教のトップである現教皇は彼女の祖父が務めている。
青の巻き髪に濃紺の大きな瞳を持つ美女で纏う雰囲気は清らかでありながら儚げ。まさに『深窓の令嬢』といったところ。
一方で、その瞳からは強い意思を感じた。冷たい炎を滾らせている。そんなイメージだ。
エレノアは彼女から向けられるそれらの感情を受け止めきれず、小さく息を呑んだ。
「……それではわたくしはこれで」
逃げるようにしてその場を後にする。
彼は言い放った。光さす宮殿の渡り廊下で。
彼の名はクリストフ・リリェバリ。三大勇者一族リリェバリ公爵家の嫡子で現在22歳。勇者の証である上下白の軍服を見事なまでに着こなしている。
しっかりと固められたブロンドの髪。アイスブルーの瞳は自信に満ち満ちていて見方によっては不遜とも取れる。
「……申し訳ございません」
エレノアは弁解することなく深々と頭を下げた。白いカソックの裾にやわらかなミルキーブロンドの髪が触れる。
「返す言葉もありません」
(わたくしは気付いて差し上げられなかった。クリストフ様はずっと助けを、安らぎを求めていたというのに)
彼もまた使命に生きているのだと、そう思い込んでしまったのだ。
クリストフは辛抱強く待ち続けた。期間にして5年だ。繰り返される期待と落胆。彼が受けた苦痛は想像に難くない。
「ご多幸をお祈り申し上げます」
クリストフの傍らに立つ、白いカソック姿の女性に目を向ける。彼女の名はシャロン・レイス。クリストフが自らの手で選んだ新しい婚約者だ。
三大聖教一族レイス侯爵家の次女。聖教のトップである現教皇は彼女の祖父が務めている。
青の巻き髪に濃紺の大きな瞳を持つ美女で纏う雰囲気は清らかでありながら儚げ。まさに『深窓の令嬢』といったところ。
一方で、その瞳からは強い意思を感じた。冷たい炎を滾らせている。そんなイメージだ。
エレノアは彼女から向けられるそれらの感情を受け止めきれず、小さく息を呑んだ。
「……それではわたくしはこれで」
逃げるようにしてその場を後にする。
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