【短編集】異世界恋愛 (by降矢)
豪華絢爛な回廊に出るなり貴族達の目がエレノアに向いた。嘲笑と侮蔑で回廊が歪んでいく。
――性的放縦な聖女。
それが今、エレノアに向けられている評価だ。この悪評によってクリストフとシャロンの結婚の正当性は一層高まる。
つまりはこれは二人が結ばれるに必要な過程。エレノアが支払うべき代償だ。その点については心の整理がついている。問題なのはこの後だ。
エレノアは聖女の職を奉じている。生まれは三大聖教一族カーライル家の侯爵令嬢。
彼女が宿す癒しと邪を祓う力は、魔物の脅威に晒されるこの国においては必要不可欠。故に婚姻の義務が、子を成す義務が生じる。醜聞に塗れていようがいまいがこの責務から逃れることは出来ないのだ。
(願わくば愛を望まぬお方を)
切に願った。自分には愛する資格も、愛される資格もないのだからと。
「オレと結婚してくれ!」
そんな彼女の前に現れたのが紅髪の少年・ユーリだった。