【短編集】異世界恋愛 (by降矢)
彼は小さな村の農夫の倅。両親の反対を押し切り、剣の道をひた走らんとする夢に満ち満ちた少年だった。
「……っ」
キツく噛み締められた唇。力み調子な栗色の瞳。彼が差し出すハルジオン別名『貧乏草』は小刻みに揺れていた。
(貴方となら……)
エレノアの胸が期待に震える。ユーリとなら愛を育むことが出来るのではないかと。
ユーリはとても真っ直ぐだから、彼であればサインを見落とすこともないのではないかと。
(何をバカなことを)
エレノアはその手で期待を握り潰した。彼女には子を成す義務がある。ユーリはまだ10歳。彼女は20歳。年齢もついでに身分も足らない。
だから、思い出にすることにした。
「分かりました。それでは10年後、貴方が立派な騎士になっていたら、その時は貴方の妻となりましょう」
ユーリはまだ幼い。軽んじるようで悪いが、その思いが10年続くとは到底思えなかったのだ。
(夢は夢のままに)
こうしてこの一幕は甘酸っぱい思い出に。記憶の引き出しにしまわれると――そう思っていた。
「……っ」
キツく噛み締められた唇。力み調子な栗色の瞳。彼が差し出すハルジオン別名『貧乏草』は小刻みに揺れていた。
(貴方となら……)
エレノアの胸が期待に震える。ユーリとなら愛を育むことが出来るのではないかと。
ユーリはとても真っ直ぐだから、彼であればサインを見落とすこともないのではないかと。
(何をバカなことを)
エレノアはその手で期待を握り潰した。彼女には子を成す義務がある。ユーリはまだ10歳。彼女は20歳。年齢もついでに身分も足らない。
だから、思い出にすることにした。
「分かりました。それでは10年後、貴方が立派な騎士になっていたら、その時は貴方の妻となりましょう」
ユーリはまだ幼い。軽んじるようで悪いが、その思いが10年続くとは到底思えなかったのだ。
(夢は夢のままに)
こうしてこの一幕は甘酸っぱい思い出に。記憶の引き出しにしまわれると――そう思っていた。