【短編集】異世界恋愛 (by降矢)
「例え2年でも、1年でも……それこそ1日だっていい。貴方と結ばれるのなら俺は――」

「後悔するわ」

「しませんよ」

「そんなの……っ、分からないでしょう」

 声が震える。喉奥が引き()る。視界が歪んでいく。厚顔無恥にも程がある。エレノアは自身を恥じると共に、自ら下した選択を心から悔いた。

「俺は貴方が思っている以上に、ずっとずっとバカなんです」

 エレノアは歪んだ視界を閉じて顔を俯かせた。肩が、顎が意思に反して震える。

「口で言っても伝わらないと思うので示させてもらいますよ。最も貴方が望んでくれればの話ですけど」

 足音がする。顔は上げられそうにない。そこにはきっとユーリがいるから。

「エレノア様、貴方のお気持ちは?」

「……わたくしは――」

「建前ではなく、本心をお聞かせください。可能なら俺の目を見て」

(断らなくては。これ以上貴方を、ユーリを不幸にしてはいけない)

 エレノアは顔を上げた。栗色の瞳と目が合う。凛としている。にもかかわらず、どこか温かで、優しくて。ユーリの纏う光『勇者の光』を彷彿とさせた。

 このままでは暴かれてしまう。エレノアは堪らず目を逸らした。


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