【短編集】異世界恋愛 (by降矢)
「それは拒絶ですか? それとも不審ですか?」
「……っ」
見兼ねた様子のユーリが助け舟を出した。拒絶だと答えればそれで済む。たった一言だ。なのに何も言えない。嗚咽を堪えるのに精いっぱいだ。
「前者なら、もう二度と貴方の前には現れません。先生と師匠の修行に同行して、そうしたらきっと貴方が生きている間に会うこともないでしょう。……ただ」
衣擦れの音がした。ユーリの体温を一層近くに感じる。かと思えば栗色の瞳と目が合った。下を向いているはずなのに。見ればユーリは屈んでいた。その瞳は挑発的で、悪戯っぽくて。
「もし後者だと言うのなら、望むところですよ」
白い歯を出して笑う。溌剌と、無邪気に。
――敵わない。
心の底からそう思った。
「貴方、優しすぎるわ」
「だから、バカなだけなんですって」
エレノアはユーリの思いを受け入れた。今度こそ偽ることなく本心から。
(余命2年。日々衰弱していく体を思えば成せる子は精々一人。それでもやはり、お父様はユーリとの結婚をお認めくださらないのかしら)
救国の勇者とはいえ生まれは平民。農夫の倅だ。母はともかく父は首を縦に振らないのではないかと――そう危惧していた。しかしながら、そんな不安もまた杞憂に終わる。
「……っ」
見兼ねた様子のユーリが助け舟を出した。拒絶だと答えればそれで済む。たった一言だ。なのに何も言えない。嗚咽を堪えるのに精いっぱいだ。
「前者なら、もう二度と貴方の前には現れません。先生と師匠の修行に同行して、そうしたらきっと貴方が生きている間に会うこともないでしょう。……ただ」
衣擦れの音がした。ユーリの体温を一層近くに感じる。かと思えば栗色の瞳と目が合った。下を向いているはずなのに。見ればユーリは屈んでいた。その瞳は挑発的で、悪戯っぽくて。
「もし後者だと言うのなら、望むところですよ」
白い歯を出して笑う。溌剌と、無邪気に。
――敵わない。
心の底からそう思った。
「貴方、優しすぎるわ」
「だから、バカなだけなんですって」
エレノアはユーリの思いを受け入れた。今度こそ偽ることなく本心から。
(余命2年。日々衰弱していく体を思えば成せる子は精々一人。それでもやはり、お父様はユーリとの結婚をお認めくださらないのかしら)
救国の勇者とはいえ生まれは平民。農夫の倅だ。母はともかく父は首を縦に振らないのではないかと――そう危惧していた。しかしながら、そんな不安もまた杞憂に終わる。