【短編集】異世界恋愛 (by降矢)
 舞踏の最中、足が(もつ)れて転びかけたところ、ふわりと上体が持ち上がった。ユーリだ。まるで背から翼が生えたような、そんな心地を味わう。

(死後、こんなふうにして貴方を見守ることが出来たらいいのに)

 そんな夢をこっそりと胸に抱く。

「っ!」

 ユーリはエレノアを宙に掲げたままくるりと回った。彼女のブルーグレーのドレスがひらりと舞う。

 突然の出来事に周囲は(どう)目したが、その機転により生み出された儚くも美しい舞は徐々に浸透。終いには大歓声を生んだ。

「ふふふっ、こんなに楽しいダンスは初めてよ」

「俺もですよ」

 一頻(ひとしき)り笑い合った後でふと視線を感じた。見れば元婚約者のクリストフがこちらに目を向けていた。

 あの日から10年。30歳となった彼は芳醇な色気を漂わせていたが、生憎とその美貌は歪んでしまっていた。嫉妬、憎悪。伝わりくる感情に臆しかけるが寸でのところで堪えた。

「……ご挨拶に伺わなくては」

「ご一緒します」

 ユーリと共にクリストフの元に向かう。


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