天才外科医は激甘愛で手放さない~絶対に俺の妻にする~
医師の紹介、病名と術式、そして患者の状況をざっくり聞いていく。
すでに事前チェックは済ませており、確認といった程度だ。
一時間後に始まる手術へ向け、カンファレンス後に準備に取り掛かる。
私は執刀医に直接器械を手渡しする“器械だし”を担当しているので、基本的な道具と術式に合わせた道具の準備を進める。
そのほかの手術器械を搬入したり、ベッド周り、患者のケア用品を用意するのは“外回り”担当の仕事だ。
「ねぇ、ひかりちゃん。西堂先生に会ったことある?」
すべての準備を済ませ待機していると、外回り看護師の大沼さんに声をかけられた。
「いえ、ありませんけど。大沼さんは?」
「ないない、海外にいた名医ですごく美形なんだって噂が立ってるから、楽しみなのよぉ」
韓流ドラマが大好きな大沼さんは、韓国俳優の名前をいくつかつぶやいて「似てたらいいな~」と笑っている。
母も好きなので、大沼さんと母が重なりつられて微笑んだ。
まったく、そんなハイスペックな医師が赴任してきたことは知らなかった。
栄斗の迎えがあり私は仕事が終わったらすぐに帰ってしまうので、みんなより話題に乗り遅れているのだろう。
すると車いすに乗った患者さん、病棟の看護師、続いて麻酔科医や臨床工学士が続々と手術室に入ってきた。
活気と緊張感が混じった不思議なこの時間は、何度体験しても慣れない。
「おはようございます。今日はよろしくお願いします」
え……?
西堂先生と思われる男性を見た瞬間、私は言葉を失った。