天才外科医は激甘愛で手放さない~絶対に俺の妻にする~

 紗彩の言葉に、俺は笑顔で首を振る。

 「紗彩、いつの話をしているんだ? メグはメグでもう別の男性をちゃんと見ているよ。それに俺にだって、好きな人がいるんだ。幸せにしたい女性は彼女しかいないよ」

 「あら、そうだったの」

 「ああ」

 そう言っている間も、胸が軋んでいる。

 きっともう、俺がこの手で最愛の人を幸せにできないと分かっているからだ。

 ひかりと音信不通になって一週間。

 病院で会っても彼女は俺と極力関わりたくない様子だ。

 ひかりが突然、俺を避け始めた理由はよく分からない。

 思い当たる節があるとするなら、大事な話があると聞いていた約束を、俺が直前に破ってしまったことが大きいのだと思う。

 栄斗くんと三人で遊んだときは、普段通りの彼女だった。

 本当はゆっくり距離を縮めて、俺を好きになってほしかったのに。

 ひかりの心が自然に動くまで待つつもりだったのに、俺は彼女が愛おしいあまり早まってほとんど告白をしてしまった。

 俺の気持ちが、彼女にとって迷惑だったのかもしれない。

 どちらにせよ、彼女が好きで仕方がないが諦めなければならないのは分かっている。

 ひかりを忘れるのには、長い時間がかかりそうだ。

 恵に関しては一週間前、産婦人科から彼女を家に送り届けた際に、ひとりの経営者の男性が駆けつけてくれていた。
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