天才外科医は激甘愛で手放さない~絶対に俺の妻にする~
 私がまだ彼への想いが残っているから、泣きそうになるんだ。

 懐かしくて切なくて、胸がきゅんと締め付けられるのは、まだ恋が続いているからだ。

 あれから三年以上が経っている。

 瀬七さんは“あの彼女”と結婚をしているはずで、子供もいるのだろう。

 想うのはやめよう。

 これからもずっと、他人のふりをするのが一番だ、と言い聞かす。

 私たちの間に生まれた栄斗の話はしない。

 私が勝手にしたことだから。

 それから緊張状態が数時間続いた後、無事に手術は成功した。
 
 周りにいた医師、看護師と視線を交わし、ようやく肩の荷が下りた私は、
 
 次のオペに場所を譲るため大急いで器具の片づけに取り掛かる。
 
 「奥名さん」
 
 「え?」
 
 背後から名前を呼ばれ、反射的に後ろを振り返ると、瀬七さんが先程にはない探るような瞳で私を見ていた。

 「どうしました?」

 何かミスでもしてしまったのだろうかと少し緊張していると、彼は固い表情で口を開く。

 「君、過去に会ったことはないか?」
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