天才外科医は激甘愛で手放さない~絶対に俺の妻にする~

 姉の紗彩と大夢とその子供、そして恵は付き合っている男性と一緒にシンガポールにやってきてくれた。

 切迫早産だった紗彩は、無事に予定日ちょうどに元気な男の子を出産した。

 同じ男の子ということで、紗彩はひかりに育児の相談をしたり、栄斗と一緒に遊びに行ったりと交流を深めている。

 そして恵はというと、まだまだ院長は結婚を認めてくれず、時間がかかりそうだと教えてくれた。

 でも彼女の粘り強い性格なら、きっといつか院長も折れてくれる日が来ると思っている。

 正直……恵には心から感謝している。

 一年前、ひかりとの関係が絶望だったときに、俺と恵との関係を包み隠さずひかりに伝えてくれたから。

 恵がアシストしてくれなかったら、ひかりの俺への誤解は解けていなかったかもしれない。この結婚もなかったかもしれないのだ。

 恵の父である院長は、今回は仕事の関係で数日間のシンガポール滞在が難しく、祝電を送ってくれた。

 あの勘違い事件の後、院長はひかりを脅してしまったことを猛省し、改めてひかりと俺を院長室に呼び寄せ、頭を下げて謝ってくれた。
 
 俺はひかりが辛い目に遭っていたのを知り、一瞬病院から離れることも頭を過ったが、

 当人であるひかりが広い心で院長の謝罪を受け止め、この一件は丸く収まった。

 ひかりの優しい人柄に、院長は今では俺たち家族を本当に温かい目で見守ってくれているし、

 時折イベントのチケットをくれたり、菓子折りを送ってくれることもあるほどだ。

 そして院長を怒らせた東園寺はというと、今は僻地の研究室で雑務をこなしているようだ。

 事実上の左遷。

 俺をはじめ多くの医師からの不真面目な勤務態度の密告が決め手のようだった。

 手術中の粗雑な振る舞いが目立っていた彼は、いずれ医療事故を起こすだろうと思っていたので、俺は心底安心した。

 「では、新婦よりブーケトスを行います」
< 144 / 147 >

この作品をシェア

pagetop