天才外科医は激甘愛で手放さない~絶対に俺の妻にする~

 視線を上げて目で懇願すると、彼は眉をひそめ戸惑った表情を浮かべていた。

 彼の力強さに、不覚にも全身の熱が上がる。

 すると瀬七さんは状況を分かってくれたのか、そっと腕を解いてくれた。

 「すまない」

 「いえ、今日はお疲れさまでした」

 言葉少なに挨拶を交わし、逃げるようにしてその場を立ち去る。

 速くなった鼓動の音は収まる様子がなく、息が苦しい。

 会ってはいけないのに、再会できてうれしい。

 彼に気づかれたくないのに、覚えていてくれてうれしい。

 誰にも話せないこの思いを、自分の中で消化しなくてはいけない苦しみが、私を襲う。

 どうして世界はこんなに広いのに、彼とまた出会ってしまったの……?
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