天才外科医は激甘愛で手放さない~絶対に俺の妻にする~
冗談とも取りづらい言葉に言い淀んでいると、恵が院長の背中を無理やり押す。
「パパ、瀬七を困らせないで。お仕事頑張ってきてください」
「メグ、わかったよ。じゃあ、西堂君よろしく頼んだ」
「はい、お任せください」
院長がいなくなった部屋はシン、と静まり返る。
勢いよく振り返った恵は、顔の前で音を立て両手を合わせた。
「もー、パパったらごめんね? いつもあんな感じで」
「本当だ。院長は何度説明したら分かってくれるんだ?」
いつもの軽い調子で文句を言うと、恵は明るく笑いかけてくる。
「パパは頑固だから、本当に瀬七が私と結婚するまで言い続けるかも」
「それは無理だ」
恵がすねたように頬を膨らませるが、頭を振って断固拒否する。
恵には今まで幾度となく告白されているが、俺にとって彼女は妹のような存在で、それ以上でも以下でもない。
いくら霧島院長の頼みだとしても、ひかりを想っている以上、そればかりは譲れない。
「それで、メグは何か俺に用でもあったのか?」
気になって尋ねると、恵は途端に目を輝かせた。
「うんっ、そうなの……実は瀬七にお願いがあって――」
「お願い……?」
恵の頼みは、今までよかった試しがない。
成績が学年で最下位になったから、成績がよくなるまで家庭教師になってほしいとか。
大学を休学してシンガポールに語学留学してきたから、新居探しを手伝ってほしい――など。
「さあや姉と、大夢くんにベビーシャワーをしてあげたいなって思ってるんだけど、手伝って!」