天才外科医は激甘愛で手放さない~絶対に俺の妻にする~

 心の中でつぶやき、ぱくっとフレンチトーストに食らいつく。

 口の中で広がるバターと蜂蜜の甘みが、疲労困憊の体をじわじわと癒してくれるようだ。

 「あー、幸せ。涙出そう……」

 私は近所の大学病院に勤務する、手術室(オペしつ)の看護師。

 普段は母といっしょに朝食を作っているのだが、勤務が長引いた翌日だけ、こうしてゆっくりさせてもらっている。

 私はずっと、同じ病院で“オペナース”だ。

 一般的な病棟で勤務している看護師とは違い、オペナースは手術に関わる業務と手術を受ける患者の管理を行う。

 ドラマでよく見かける医師にメスを渡したり、大きなモニターを手術室にガラガラと運んだり……。

 あれらは私たちの仕事。

 医師と一緒に手術に立ち会うので緊張状態が長時間続くこともあり、看護師が就きたがらない職場ではある。

 けれど、患者の命が救われる現場に立ちあえるのはとても感動的だし、やりがいを感じるから私は好きだ。

 魅力はまだある。

 手術は大体日程が前もって決まっているので、病棟の看護師より夜勤は少ない。

 オンコール当番といって、夜間に緊急時に呼び出されることもあるけれど、月に数回だ。

 日曜日は固定休になっているため、幼い子供を育てるシングルマザーには好都合だった。

 「御馳走さまでした。美味しかった」
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