天才外科医は激甘愛で手放さない~絶対に俺の妻にする~
聞き慣れない単語に、上手く反応できない。
「ベビーシャワー……って?」
「瀬七、アメリカに住んでたのに知らないの!?」
恵が信じられない、といった顔で見てくるので、俺は仕方なくスマホをポケットから取り出し、検索をかける。
ベビーシャワーとはアメリカ発祥の、出産を控えた妊婦を祝うパーティを指すようだ。
写真から見るに、部屋を綺麗に飾り付け豪華な食事をしたり、撮影大会やゲームをしたりしている。
妊婦が安定期を過ぎたころに、母体に影響がないよう数時間で終わらせるのが一般的のようだ。
「……いや、こういうのは得意じゃないからパス。そもそも俺たち日本人だろ」
「えぇ、ずっと海外にいたくせに! それにさあや姉は瀬七の血の繋がったお姉さんでしょ? 弟が初産を祝わないなんて薄情よ」
「盛大に姉の妊娠を改めて祝うなんて。軽くでいいだろう」
恵が言ってるさあやは、俺の三つ上の姉。
そして大夢は俺の恩師である岡本医師の息子だ。ふたりは四年前に結婚し、もうすぐ子供が生まれる。
「いいじゃないの。帰りに岡本先生のお墓参りも行こうよ」
「はぁ……」
俺の父と霧島院長、そして亡くなった岡本医師は同じ医学部の同級生だったらしい。
それぞれに家族ができても三人は仲が良く、俺と姉、岡本医師のひとり息子の大夢、霧島院長の娘の恵は、昔から交流が濃かった。
さあやと大夢の結婚が決まったときも、恵が仲間内でパーティをしたいと言い出したんだった。
そうだ、たしか……。
四年前も恵が結婚式の手の込んだ余興を考えたり、とにかく大変だった。
仲間想いなのは彼女のいいところだと分かってはいるのだが……俺にそんな暇はない。
「メグ、すまない。カンファレンスの時間だ。君も持ち場に戻った方がいいぞ」