天才外科医は激甘愛で手放さない~絶対に俺の妻にする~

 「はーい。じゃあ瀬七、よろしくね!」

 「無理だぞ、メグ」

 恵はそそくさとその場から逃げ出す。

 思わず肩を落とすが、すぐに頭を切り替えて用意にとりかかった。

 今日は手術が同時刻に三件行われる予定で、いつもより慌ただしい現場が予想される。

 ひかりとはあれきりなので、一瞬でも顔を合わせられたらと期待を抱いてしまう。

 「もし会えたら、渡そう」

 デスクランプにひっかけていたネックレスを手に取り、ポケットに忍ばせた。

 ――俺が日本に戻ってきた一番の理由は、ひかりに会える奇跡を信じたかったからだ。

 ひかりを見つけられなかった俺は意気消沈し、一度は完全に彼女を忘れようと決めた。

 しかしどうしても無理だった。ふとしたときに、結局俺は彼女を探していた。

 美しい景色を見ている時も、ひとりでベッドに入っている時も、彼女に恋い焦がれていた。

 俺はこの四年間で、ひかりを超える女性は現れないと悟っている。

 一年前に霧島院長に声をかけられたとき、迷いなく赴任を決めていた。

 自分の意識よりもずっと、心は彼女を求めていたのだ。

 アメリカで積んだ莫大なキャリアを捨ててでも、日本にいるひかりに会いたい。

 少ない手がかりしかないが、奇跡を信じて見つけ出したかった。

 そして一度ちゃんと話し、傷つけたのなら謝りたかった。

 ここまで、とんでもない奇跡が起きている。

 どうにか彼女と、前みたいに話せないだろうか。

 「西堂先生、おはようございます」
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