天才外科医は激甘愛で手放さない~絶対に俺の妻にする~
 「おはようございます。今日はよろしくお願いします」

 心臓血管外科の合同カンファレンスが行われる会議室の一席に座っていると、隣に東園寺先生が着席した。

彼は今日の手術で、助手として参加してもらう予定だ。

 身長は百八十くらいで細身の、さっぱりとした顔立ち。研修医に混じっていても違和感がないくらい、若く見える。

 たしか俺とそこまで年齢は変わらなかったはずだ。

 当たり障りない会話を続ける中、東園寺先生は突然大きなため息をついた。

 「今日は立て続けに三時間越えの手術か。本当いやになっちゃいますよね。早くロボットが全部済ませてくれるような未来が来てくれればなぁ」

 彼の聞き捨てならない言葉に眉間に皺が寄る。

 だがしかし、感情を悟られまいと無理やり笑顔を作った。

 「人間にしかない五感こそ、手術の肝でしょう。そう寂しいことは言わないでください」

 「まぁ、そうか。とにかく手術は数をこなしてナンボだし、気合入れていかなきゃですね。俺も早いとこ西堂先生に追いつけるように頑張ります」

 人の命を預かっているとは思えない無責任な発言の数々に、呆れて物も言えない。

 稀にこういった、人の命を預かる手術を出世の点数稼ぎとしか思えないとんでもない医師がいる。

 極力関わりたくない人種だが、俺がここに来たからには、こういう奴らの意識から変えていかなければならないだろう。

 「あ、ひかりさんから連絡来てる」
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