紺碧の夜に見る夢は

 トントン、と肩を叩かれる。おそるおそる目を開けると、そこには先ほどの美貌があった。


「もう大丈夫だよ。片付けたから」


 片付けた、とは。そのまま解釈していいのなら、奴らは追い払ったよ、ということだろうか。
 フッ、と上がる口許が溢れんばかりの色気を漂わせる。


 危険な表情、危険な声、危険な香り、危険な雰囲気(ムード)。絶対に関わってはいけないと分かっているのに、こんなにも惹かれてやまないのはどうしてだろう。


「……ありがとう、ございました」

「安心するのはまだはやいよ。もしかしたら、僕が襲うかもしれないんだから」

「え」


 一歩引くと、「嘘だけど」と笑った彼は、そのまま少しだけ眉を下げる。


「でも、君は危機感が足りなさすぎるよ。こんなところに飛び込んできちゃだめだろ」

「焦って、それで」

「まあ、気持ちは分からなくもないけどね。表は人酔いするし、匂いきついし」


 ところどころ幼さが残るような口調。見た目からして、大学生くらいだろうか。

 タバコを吸っていたので大人には間違いないのだけれど。
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