紺碧の夜に見る夢は
……と、ふいに肩に手が置かれた。びくりと振り返ると、そこにはいかにもチャラそうな男性が数人。
砂糖とミルクとバニラを最大限溶かし込んで混ぜたような甘ったるい匂いが鼻をつく。
(そんな匂い、誰が好きになるの)
匂いに酔うのは初めてだ。
ネオンに照らされてキラキラと光る銀色を耳につけ、身体からジャラジャラと金属の音を立てている。
わたしが目を見開いたのを見ると、それを面白がるようににたりと笑いながら、一歩一歩と近づいてきた。
「お嬢ちゃん可愛い顔してんじゃん。あれかな? 高校生くらいかな? こんなところに一人でいるってことは、そういうこと待ちって解釈でオッケーかな?」
疑問符を浮かべていないと死んでしまうのではないか。そんなふうに思ってしまうほど質問口調の彼らは、口角を歪ませ、手を伸ばしてくる。
「っ……!」
ボス的存在の男性の手がわたしの肩に触れる寸前、咄嗟に地面を蹴って駆け出す。人と人の間をするりと抜けて、がむしゃらに走った。
「おい、待て!」
声と同時に大きくなる足音。
恐怖が背中を追ってくる、そんな感じがした。
どこにいっても視界に広がる、光、ひかり。
こんなに眩しいところでは、また奴らに見つかってしまう。今度見つかったら何をされるかわからない。
パーカーのフードを深く被って、できるだけ顔を隠す。浅い呼吸を幾度も繰り返しながら、足を止めることなくひたすら走った。
「はぁ……はぁ……っ」
できるだけ光がない場所へ、姿が見えない場所へ行かないと────。