紺碧の夜に見る夢は

 そのときふと、前方に黒い影が浮かんだ。

 寄っていくたびに、解像度が高くなる。


「っ……!」


 それは、とても美しい……男の人。

 腰まである銀色の髪が月明かりだけを受けて煌めき、咥えたタバコには火がついている。


 そのままこちらに流れた瞳は────夜を映した紺碧。


「た、助けてください……!」


 縋るように懇願する。

 この人に見放されたら、その時はもうそういう運命なのだと。

 そんなふうに受け入れてしまうしかないほど、身体も心も疲労困憊し、逃げる気力さえ失いかけていた。



 ひやりとした瞳と、引き締まったフェイスライン。

 この世のものとは思えない美貌は、つくり物のような儚さを纏い、夜の世界に存在していた。


 フーッ、と煙が一瞬、彼の顔を隠す。

 再び現れた美貌は、思わず息を呑んでしまうほど艶やかな表情を浮かべていた。
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