紺碧の夜に見る夢は
視線をわたしの後ろへと流した彼は、壁に縋るような姿勢のまま「君さ」と呟く。
胸の奥の何かを疼かせるような、低い響き。足から力が抜けそうになるのを必死に堪えて、踏みとどまる。
「は、はい……っ」
「僕がそいつらのボスだって言ったら、どーする?」
「へ……」
にやっと口角を上げた銀髪の男は、呆然とするわたしを青い目でまっすぐに射抜く。逃すまい、という言葉が瞳を通して聞こえてくるような気がした。
「……やっ」
喉が絞られたように苦しくて、声が出せない。カタカタと唇が震えて、身体中が冷たいもので覆われているような感覚に陥る。
(もう、終わりだ)
青い夜なんて、探しにこなければよかった。何度後悔しても、もう遅い。
にや、と口角を上げる彼の唇の隙間から、鋭く尖った歯が覗いた。
喰べられてしまう────。
恐怖に支配されなければいけないはずの心の中で、いちばんに思ったことは。
「きれい……」
ただ、それだけだった。
風に靡く銀髪。切長の瞳。
スッと通った鼻筋に、薄い唇、フェイスライン。
どのパーツも、それぞれの最上級を取り揃えたようなもので、配置も完璧。
まるで神が何十柱も集まって、相談しながら念入りに造られたような、そんな美しいものだった。