私が一番あなたの傍に…
「…なくなっちゃった」

結構大きいかき揚げだったはず。そのかき揚げが一瞬でなくなってしまった。
美味しいものの威力の大きさに圧倒された。恐るべし天ぷら…。

「俺も一瞬でなくなってたわ」

愁も天ぷらの美味しさに圧倒されたみたいだ。二人して一瞬でかき揚げがなくなってしまった…。
このまま別の天ぷらを食べても、同じように一瞬でなくなってしまいそうだ。
そう思ったら早くかしわ天も食べたい衝動に駆られた。

「あっ…ベルが鳴った」

そんなことを考えていたら、急に呼び出し用のベルが鳴った。どうやらラーメンと餃子が出来上がったみたいだ。

「俺、取りに行ってくるわ」

ベルを持って、そのままラーメンと餃子を取りに行った。
私は愁と一緒に食べたいなと思い、愁の帰りを待つために一旦食べるのを止めた。きっとすぐに戻ってくるに違いない。
待つこと一分…。餃子とラーメンを持って愁が戻ってきた。

「ただいま…」

「おかえり」

「はい、餃子」

私のテーブルの方に、私の分の餃子を乗せてくれた。

「ありがとう。美味しそう…」

もうダメだ。今度は餃子に釘付けだ。早く餃子が食べたい。

「いえいえ。それじゃ改めていただきます…」

「いただきます…」

お皿には餃子が四個乗っている。隣に小皿が添えられており、既に小皿に醤油とラー油と酢が注がれている。恐らく愁がやってくれたのであろう。有難い。
小皿に注がれている液体を軽く混ぜてから、餃子を一回液体に付ける。
そのまま口元へと運ぶ。口を大きく開け、一気に口の中へ放り込む。
ゆっくり噛みながら、餃子の旨味を味わう。野菜とお肉とにんにくが口の中で絡み合い、美味しさのハーモニーを奏でている。
これはもう無限に止まらない。気がついたらまたなくなっているパターンだ。
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