私が一番あなたの傍に…
「ただいま…」

鍵を開錠し、玄関の扉を開けて家の中に入っていくと、愁が待っていてくれた。

「おかえり。バイトお疲れ様」

私の鞄をそっと私の手から取り、私がいつも鞄を置いているところに置いてくれた。

「ありがとう。鞄戻してくれて」

「いえいえ。働いてきて帰ってきた彼女を労りたいだけですから」

その気持ちが嬉しかった。疲れた身体が癒やされた。

「その気持ちが嬉しい。頑張って働いてきたかいがあるよ」

クリスマスに仕事…なんて、世間が休みで皆が楽しんでいるのに虚しい気持ちになる。
本当はアルバイトに行きたくなかったので、愁にそう言ってもらえて嬉しかった。

「頑張って働いてきた幸奈にご褒美があります」

ご褒美ってなんだろう。一気にワクワクしてきた。

「え?なになに?」

「まずこれに着替えてみて。好みじゃなかったらごめんな」

いきなりブランドショップの袋を渡された。この中に服が入っているみたいだ。

「分かった。着替えてくるね」

愁はセンスがあるので、多分好みじゃないってことはないと思う。
そこは信頼しているので、期待しながら袋から服を出す。
袋から出てきたのは綺麗めな高級感溢れるワンピースだ。
丈は膝より少し下で。大人な上品さを感じる。
袋の中には鞄と靴も入っていた。どうやらワンピースに合わせて用意してくれたみたいだ。
でもどうして用意してくれたんだろう。もしかして今からデートをしに出かけるとか?
そう考えると腑に落ちた。これは期待しても良さそうだ。素早く愁が用意してくれた服に着替えた。
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