私が一番あなたの傍に…
「俺はバイト先に就職したから、一から人間関係を築き上げる必要はないし、ある意味入社後の心配はないんだけど、幸奈はこれから新しい職場だから心配なのもあるし、ずっと働いてきてお世話になってきたからこそ、離れるのって余計に辛いよな。俺も同じ立場だったらそう思ってたと思う」

それぞれ色々な形がある。正直、これからも同じ所で働ける愁が羨ましいと思った。
でもそれは愁が頑張ってきたから、今の道がある。それは愁の努力そのものだ。
私だって看護師になるためにこれまで頑張って努力してきた。
だからちゃんと試験に合格できたし、それにちゃんと就職先が見つかったのだから、それで充分だ。
実際に仕事を始めてみないと分からないのに、今から心配していても仕方がない。入社してから頑張ればいいのだから。

「店長も同僚も良い人達だったから、もう働けなくなるのかと思うと寂しい。
でもこれからはお客として遊びに行けばいいし、それにこの春からいよいよ看護師として働けるのが楽しみでもあるんだよね」

仕事は想像する何倍も大変であろう。実習していた時、横から見ていてそう思った。
でもようやく仕事をさせてもらえる。その楽しみの方が勝っていた。

「もちろん不安な気持ちもあるよ。人間関係上手くやれるかなとか。思ってたより職場の環境が悪かったらどうしよう…とか。
でもそれって実際に働いてみないと分からないから、今から不安に感じててもしょうがないんだよね。そう思えたら、今から働ける喜びの方が勝ってるというか、早く一人前の社会人になりたい!って思った」

先に社会人として立派に仕事をしている蒼空と小林さんが羨ましくて。今の私には輝いて見えた。

「俺も早く一人前の社会人になりてー…って、ずっとバイトしながら思ってた。やっと社会人になれて嬉しい。早く職場で働きたい」

学生の方が楽かもしれない。働くって想像以上に大変なことだから。
でも今の私達には早く大人になりたいという、その気持ちしか見えていなかった。

「そうだね。でもその前に最後の学生時間を利用して、思いっきり遊びたいね」

今しかない時間を大切にし、その貴重な時間で残りの学生生活を謳歌したい。

「早く卒業旅行に行きてーな」

今の私達にとって、卒業式と同じくらい一大イベントだ。

「もうすぐだよ。もう卒業式まで時間ないし」

「確かにそうだな。あともう少しか。早いな。あっという間だな…」
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