私が一番あなたの傍に…
大学生活はとても濃い時間を過ごした。愁と出逢えたこと。バイトをしたこと。友達と遊んだこと。勉強が大変だったこと。どれも良い思い出だ。
この素敵な思い出を大事に忘れずにいつまでも覚えていたい。大人になって振り返った時、楽しかったねって愁と話したい。

「あっという間だったね。不思議な感じ。まだ大学に入学したばかりの頃を鮮明に思い出せるよ」

知らない土地に上京してきたので、友達ができるかどうか不安だった。
まさかバイトして、好きな人ができるなんて、あの頃の私には想像できなかった。

「俺も思い出せる。幸奈と一緒にバイトしてた頃がすげー懐かしく感じる」

私もとても懐かしく感じる。あの頃、辛かったけど楽しかった。
もう愁とは一緒に働くことはできないけれど、あの頃の思い出は一生忘れない。

「懐かしいね。あの頃、愁とシフトが被って、一緒に帰れるだけで嬉しかったもん」

彼女と一緒に居る姿を見るのは辛くて。その時だけはバイトを休みたいと何度もそう思った。
それ以外の時は好きな人に会えるのが嬉しくて。バイトに行くのが楽しみで仕方がなかった。

「俺も同じことを考えてた。だから幸奈がバイトを辞めて、俺の前から消えた時、すげー辛かった。もうこの世の終わりかと思った…」

私もあの時はこの世の終わりだと思っていた。
まさかあれから恋人になるなんて思ってもみなかったけど。

「こうして振り返ってみると、大学生活、本当に色々あったけど、楽しかったな…」

終わりよければすべてよし。色々あった過程すら今では楽しかったと思える。

「楽しかったね。もう終わるの寂しいな…」

卒業後に楽しみが待っているが、大学を卒業するのは寂しい。
急に涙腺が緩みそうになった。泣くのは卒業式までとっておくことにした。
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