私が一番あなたの傍に…
「あのさ、幸奈…」

急に愁の表情が真剣な表情に変わった。
私はその表情を見た瞬間、途端に緊張感が走った。

「どうしたの?愁」

「俺はまだ社会人に成り立てで。これからちゃんと働けるかどうか不安だけど。それでも言わせてほしい」

ここまで言われたら、愁が私に何を伝えたいのか意図が伝わった。
その言葉をずっと言いたいと待ち望んでいたのは愁の方だ。
そしてそんな愁がいつか覚悟を決めて伝えてくれると、私も信じて待っていた。
それはもっと先だと思っていたけれども。愁の性格を考えれば待つなんて選択肢はないとすぐに気づけた。

「俺と結婚してください……!!!」

他のお客さんに迷惑がかからない程度の声の大きさだったが、店内が静かなこともあり、愁の声が響いた。
いざプロポーズを受けると、どう反応したらいいのか分からず、数十秒ほど固まってしまった。
そしてそこでようやく自分がプロポーズを受けたのだと自覚することができた。
もちろん私の答えは決まっていた。自分の気持ちを伝えるために一旦、深呼吸をしてから伝えた。

「私で良ければこれからもよろしくお願いします…」

二十二歳の春…。大学卒業と共に私は大好きな彼氏からプロポーズを受けた。
忘れられない、そんな素敵な卒業旅行を過ごしたのであった…。
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