私が一番あなたの傍に…
「岩城幸奈になったんだ…。ふふ…」

左手の薬指に嵌められている指輪を眺めながら、ずっとニヤニヤしている。
今はまだ婚約指輪。結婚式後は結婚指輪。しかも結婚指輪は愁も嵌めることになる。
指輪をしているというだけで、夫婦という証が証明されている気がして。ついニヤけてしまう。

「俺と幸奈が同じ苗字になったのか。幸奈が俺の奥さんになったんだって実感できて嬉しい」

私も嬉しい。やっと愁のお嫁さんになれたのだから。

「私も嬉しい。愁のお嫁さんになれたんだ…って、苗字が変わったこともだし、この指輪を見て実感してる」

今まで指輪ってオシャレでしか付けたことがなかったから、こうやって意味のあるものを付けていることに感動している。 

「いいな。俺も早く付けたい」

婚約指輪は女性だけが付けることが多い。でもどうして女性だけなのだろうか。男性も付けてもいいはず。
だからこそ羨ましく思う愁の気持ちは痛いほど分かる。でもその分、結婚指輪が待っている。そう思えば後の楽しみが待っているということでもある。
だけどそれなら私だって婚約指輪より、結婚指輪の方が付けたい。愁と一緒に付けることに意味があるから。

「もう少ししたら一緒にお揃いの指輪が付けられるから楽しみだね…」

自分の指と愁の指に指輪が嵌められている姿を想像する。それだけで今は幸せだ。
それがもう少ししたら実現される。そう思うと婚約指輪はほんの一瞬に過ぎない。

「おう。そうだな。楽しみだ…」

結婚式まであと数週間。そう思うと本当にあっという間に感じた。
そう思えば思うほど、結婚式がより楽しみで仕方がなかった。
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