私が一番あなたの傍に…
「そうですよ。あなたは誰ですか?」

「俺は蒼空。幸奈のバイト仲間です」

二人共、目が笑っていなかった。
愁は分かるが、何故蒼空も?不思議で仕方がなかった。

「それはどうも。いつも俺の《《彼女》》がお世話になってます」

愁がわざと棘のある言い方をした。自分のモノだと分からせるために。

「こちらこそ、いつも幸奈にはお世話になってます。幸奈は仕事ができて、皆の人気者ですよ」

愁の棘のある言い方など、気にも留めていないと言わんばかりに、蒼空が対抗してきた。
バイト中のことは蒼空の方が詳しい。一緒に働いているから。
愁にこれ以上、大きな口を開かせないと言わんばかりに、自分の武器を振りかざしてきた。
でも、愁がそんなことで折れるはずがなかった。

「へぇー。そうなんすね。俺と《《同じバイト先》》で働いていた時も、幸奈は仕事ができて皆から慕われてましたよ」

そんなことくらい、俺も知ってると言わんばかりに、愁も反撃に転じた。
でも、蒼空もここで簡単に折れたりなんかしなかった。

「そうなんですね。でも結局、そこでは合わなかったから、今、うちにいるってことですよね」

皮肉のオンパレードだ。バチバチした雰囲気に、私は耐えられなかった。
そんな私を察してか、愁が私の腕を掴み、手を繋いできた。

「確かにそうかもしれませんが、そこまであなたに言われる必要はありません。あくまで決めたのは幸奈なので。俺は幸奈の意見を尊重したいだけです」

私は愁の言葉に、胸に温かい気持ちが込み上げてきた。
色々思うことはあるかもしれないけど、ゆっくり私達らしく付き合っていけたらいいなと思った。
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