私が一番あなたの傍に…
「その優しさに配慮してますという態度、程々にした方がいいですよ。出過ぎた真似は、時に邪魔だと感じることもあるので」

さすがにそれは言い過ぎではないかと思い、反論しようかと思ったが、先に愁が口を開いた。

「ご忠告、どうもありがとうございます」

それ以上、反論しなかった。私の方がモヤモヤした。自分の彼氏を悪く言われて、良い気分の彼女なんているわけがない。

「あくまでこれは忠告なので。こちらのことなど気にせずに、続けて下さっても構いませんけどね」

私には分からなかった。どうして、蒼空がこんなにも愁を目の敵にしているのかを。
この状況を理解し合っていたのは、愁と蒼空だけで。私は居心地が悪いまま、その場を後にした。


           *


道中は静かだった。愁の機嫌が(すこぶ)る悪かった。
そして、家に着き、今も尚、無言の時間が続いている。
気まずい。どうしたらいいのか分からず、戸惑っていた。

「なぁ、あの男は一体、なんなんだ?」

愁からしたら、頭にくるのは当然だ。
私もあんな蒼空を見たのは初めてで。驚いている。

「いつもは穏やかだよ?今日、初めてあんな姿を見た」

久しぶりに話したというのもあり、私はあまりまだよく蒼空のことを知らない。
だから、私も戸惑っている。

「…あの男、絶対に幸奈のことが好きだ」

それはどうなのか分からないが、愁に対して良くない印象を持っているのは確かだ。
私が嫌なことがあったと話してしまったから。蒼空はなんとなく嫌なことを察しているみたいだ。
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