私が一番あなたの傍に…
「はーい…」

「俺。愁」

声も愁だが、モニターの画面に映っている人も愁だ。
ちゃんと確認してから、玄関のドアを開けた。物騒な世の中なので、用心するに越したことはない。

「お疲れ様。どうぞ」

一言声をかけてから、ドアを開けた。

「ありがとう。お邪魔します…」

そのまま愁は靴を脱ぎ、部屋の中へと入っていった。

「どうぞ。大したお構いはできませんが」

「全然それは大丈夫だよ。お構いなく」

そう言ってくれたので、お言葉に甘えてお茶だけ用意させてもらった。

「分かった。とりあえず、お茶だけどうぞ」

疲れた身体には、温かいお茶より冷たいお茶かなと思い、冷たいお茶を用意した。

「ありがとう。いただきます…」

私が淹れたお茶を飲んでくれた。
気を使って飲んでくれたのもあると思うが、喉も乾いていたのであろう。
私も話すのに緊張して喉が乾いていたので、一気に飲み干した。

「幸奈、飲みっぷりがいいな」

「まぁね」

適当に上手く誤魔化した。バレないようにするために…。
今回のことは、愁に指摘される前に自分から話したかった。
だから、少し強引だが、話の流れを無理矢理、こちらのペースに合わせてもらった。

「あのね、今日誘ったのは、話したいことがあって、愁を誘いました」

言ってしまった…。もう戻れない。
一旦、一呼吸置いてから喋り始めた。
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