私が一番あなたの傍に…
「︎︎私は今、お付き合いしている人がいて。その人のことが大好きなので、蒼空の気持ちには応えられません。ごめんなさい」

きっぱりと断った。誰かをフるのって、こんなにも勇気がいるなんて知らなかった。

「ありがとう。俺のためにきっぱりとフッてくれて」

もしかしたら、ずっとこうなる日を望んでいたのは、蒼空の方なのかもしれない。そんな気がした。

「先に言っておくが、俺の気のせいならそれで構わないが。俺をフッた気まずさと申し訳なさで、バイトを辞めなくてもいいからな。
俺はこれからも同僚として、幸奈と仲良くやっていくつもりだから。そこだけは安心しろ」

これから先、バイトで気まずくならないように、蒼空の方から先回りして気を使ってくれた。
フラれた直後で、気持ち的に辛いはずなのに、最後まで蒼空はずっと優しいなと思った。

「もちろん、辞めるつもりはなかったよ。だって、今のバイト楽しいし、素敵な仲間がたくさんいるから」

遠回しにそれは蒼空もだよ、という意味も込めて伝えた。
だって、今のアルバイトの仲間に出会えたのは、蒼空のお陰だから。

「そっか。ならよかった。それじゃ、また次のバイトでもよろしくな」

そう言って、手を振りながら去った。
こんなにも爽やかな終わり方があるなんて、思ってもみなかった。
もしかしたら、これはある意味、新たな始まりなのかもしれない。
そこに友情が存在していることを、身勝手ながら願った。
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