私が一番あなたの傍に…
ロック画面を見ると、やっぱり愁だった。メッセージの内容を確認した。

“俺も幸奈と話したい”

嬉しかった。愁にそう言ってもらえたことが。
すぐに返事を返した。愁も同じ気持ちで嬉しいという想いを伝えるために。

“そう言ってもらえて嬉しい。今から会える?”

自分から積極的にいけなかった頃が嘘みたいだ。こうやって誘えるようになった自分が嬉しかった。
同時に愁からの返事をドキドキしながら待っていた。誘いに乗ってくれたら嬉しい。
でも、急なお誘いだから、向こうだって難しいかもしれない。断られても凹んだりはしない。寧ろ応じてもらえるだけで有難い。
そう思いながら返事を待っていると、またすぐに愁から返事が返ってきた。

“俺も会いたい。今すぐに会おう”

その言葉を見た瞬間、今すぐに会いたい衝動に駆られた。
走る必要なんてないのに、私の身体は勝手に走り出していた。
どうして人は誰かを好きになると、周りが見えなくなってしまうのだろうか。不思議だ。この感覚から抜け出せない。どんなに時間が経っても愁を好きな気持ちは加速していくばかりだ。
そんな想いを抱きながら、私が走って向かった先は一つだった。私達がいつも必然的に集まる場所。

「幸奈……っ!」

愁も走って向かって来たみたいだ。まさかお互いに走って向かって来るなんて思ってもみなかった。
それだけで嬉しかった。私だけじゃないと分かったから。

「愁……っ!」

愁の元へと駆け出した。早くあなたに会いたい。会って抱きしめてほしい。
もう悩んでいたことが嘘みたいだ。好きな人に会えるだけで、今までの気持ちが全て吹き飛んだ。
どうして悩んでいたのだろうと思うくらいに。今なら自分の気持ちを素直に言える。そして、二人にとって良い答えが出せそうな気がした。
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