私が一番あなたの傍に…
昔の私は、確かにそうだったのかもしれない。
まだ男性を知らない、純粋無垢だった…。

「ありがとう。見守ってくれてて。
でも、声はかけてほしかったなって思うよ」

「何度も声をかけようと思ったんだよ。
でも、いざ声をかけようと思うと、緊張して声をかけられなくて…」

もし、自分が逆の立場だったら、同じように緊張して声をかけられなかったかもしれない。
だって、あの頃の私達は、まだアルバイト仲間という繋がりだけしかなかった。
でも、今は違う。やっと新しい繋がりを手に入れたのだから。

「そっか。でも、これからは恋人なんだから、声かけえてね。約束だよ?」

指切りげんまんをした。もう今の私達に隔てる壁なんて存在しない。

「お前も見かけたら、声かけろよ?俺の彼女だって、友達に自慢したいから」

サラッとこういうことが言えちゃう愁がすごい。
改めて私がこの人の彼女になったのだと、自覚させられた。

「そう言ってもらえて嬉しい……」

私だって友達に、『この人が私の彼氏です…』って自慢したい。早く友達に紹介したいと思った。

「当たり前だろうが。俺と付き合ってるんだからな」

肝心なところで格好つかないのが、愁らしいなと思った。

「それでその…、そろそろ話を戻してもいいですか?」

「なんだよ。またその男の話か?」

サラッと話を流したことがショックなのか、再び愁の機嫌が悪くなった。
この調子だと、『俺が幸奈の分も稼ぐから安心しろ』…なんて言って、反対するに違いない。
蒼空に断りを入れることを考えつつ、愁にバイトのことを話してみることにした。
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