私が一番あなたの傍に…
「なるほど。そうなんだ。確かに俺が見た感じでも、お父さんとの方が幸奈は距離が近いのかもね」

傍から見た愁でもそう思うってことは、実際に母と私の相性は悪いんだと思う。
だから今回のことも、上手くいかなかったことに納得している。母だから仕方ない。今回は諦めて、また日を改めて説得するとしよう。

「そうかもしれない。でも父はあまり多くを語らないから、何を考えているのかよくわからないけどね」

いつも父は中間的立ち位置として、見守ってくれている。片方に加担しすぎると、片方が嫌な気持ちになるから、敢えてどちらにも加担しないようにしてくれているのだと思う。
そんな父は、誰よりも家族を愛している。そんな愛情の深さに、私は改めて父親の存在の大きさに助けられた。

「俺からしたら、よく分かるよ。娘が大事で。お母さんのことも大事で。どっちも同じくらい愛してるってこと」

同じ男として、愁だからこそ分かる気持ちなのであろう。
まだ気が早いが、愁の父親像が浮かんだ。きっと良いお父さんになりそうな予感が今からした。

「愁の言う通りだと思う。お父さん、いつも間に入ってくれるから。お父さんもお母さんもだけど、二人共、私のことをちゃんと愛してくれてるなって実感した」

今までだって実感できなかったわけじゃない。ずっと愛情を感じてこれた。
今回のことでよく分かった。自分のことを考えた上で、反対してくれているということを。
それを大好きな人に教えてもらった。やっぱり私には愁しかいない。改めてそう思った。
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