私が一番あなたの傍に…
「俺もそう思う。だからなんとかなるよ。今回のこともさ」

本来なら、私が気を遣わなければならない立場なのに。逆に気を遣わせてしまっている。
もうこれ以上、気を遣わせるのは止めよう。気持ちを切り替えて、前を向こうと思う。

「うん。そうだね。私のお父さんとお母さんだからね」

下ばかり見ていたって、どうにもならない。今は親と向き合いたい。自分の気持ちを分かってほしい。これからも長い付き合いになると思うから。

「そうだね。幸奈のお父さんとお母さんだからね」

繋いでいる手を、優しく握り直した。あなたが傍に居てくれて嬉しいと伝えるために。

「もうちょいゆっくりしてから、幸奈ん家に戻ろっか」

今はまだもう少しだけ二人の時間を大切にしたい。本来の目的からズレてはいるが、一旦、色んなことは忘れて、この時間をもう少しだけ楽しんでから、両親と向き合いたい。

「うん。そうしよう。…そうだ。ついでに私が通ってた小学校とか見に行く?」

愁にもっと私のことを知ってほしい。今まで教えなかった分、知って欲しいと思った。

「行きたい。どんな学校に通ってたのか、気になる」

愁が前向きに私の提案に乗ってくれた。それが嬉しくて。思わず抱きつきそうになった。
でも堪えた。ここは地元。誰に見られているか分からない。ご近所で噂が流れたら、苦労するのは親だ。これ以上、親に迷惑はかけられない。なので、手を繋ぐだけにしておいた。
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