私が一番あなたの傍に…
こんな気持ちを先に愁が味わっていたのかと思うと、改めて愁の落ち着いた対応力に感心した。同じように落ち着いた対応はできないが、迷惑はかけないようにちゃんと挨拶ができたらいいなと思った。

「但し、なるべく帰れる時に二人で顔を出しに帰って来ること。それが父さんからの提案だ」

きっとお母さんの気持ちも考えた上で、お父さんは双方に利点がある案を考えてくれたんだと思う。
私もずっと実家に帰って来ないでいたので、お父さんに反論できない。きっかけがないと帰って来なかったと思うから。
これを機に愁を引き連れて、実家に帰ろうと思う。

「分かった。その案、受け入れるよ。愁、それでいい?」

愁は嫌な顔をせずに、「いいよ」と言ってくれた。
お父さんは愁の言葉を聞いて、安心した表情を浮かべていた。父親として、自分の娘を任せる相手がちゃんとした相手であれば、安心して任せることができる。
きっと挨拶をしに来た段階で、父はもう覚悟を決めていたと思うし、改めてこういった約束事を守り、娘の家族も大事にできるかどうか確認したかったのであろう。
それがちゃんと確認でき、良好な関係を築き上げられることが分かり、父はもう言うことがないみたいだ。安心して娘を任せる父親の顔をしていた。

「お家が決まったら連絡してね。お祝い送るから」

これからは包み隠さずに、彼氏のことを家族にも報告しようと思う。
いつか親戚になるかもしれないから。家族ともっと仲良くなってほしいし、家族にももっと愁の良さを知ってほしい。
そうやってお互いのことを知っていけたらいいなと思った。

「うん。ちゃんと決まったら連絡する」
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