私が一番あなたの傍に…
「早速、新居に向かいますか」

いよいよ同棲開始だ。そう思ったら急に現実味が増した。引っ越しの準備中もそう思っていたが、それ以上に今の方がよりそう実感した。

「そうだね。新居に向かおう」

繋いでいる愁の手を引っ張って歩き出した。早く部屋に着きたくて仕方がなかった。
私達の部屋は五階にある。このマンションはちなみに全部で十階なので、ちょうど真ん中の階だ。
さすがに五階まで階段では行けないので、エレベーターで部屋まで向かう。
エレベーターの前まで歩き、ボタンを押し、エレベーターが着くのを待った。
数十秒待ったらエレベーターが着いた。扉が開いたので、エレベーターの中に入った。勿論、手は繋いだまま…。
どんどん階が上がっていく。階が上がっていく度に胸の高鳴りが加速していく。
エレベーターなので、あっという間に五階に着いてしまった。

「もう着いちゃったね。早いね。さすがエレベーター…」

「だな。ははは…」

お互いに緊張しているのが伝わる。そりゃそうだ。実家に住んでいた時間の方が長くて。一人暮らしすらままならない子供の私達が、今から一緒に暮らすのだから。
家族以外の人と一緒に暮らすのは初めてで。ちゃんと暮らしていけるか少し不安な気持ちもある。
でもそれ以上に新生活が楽しみで。不安な気持ちなんてどうでもいいくらいに、今はワクワクしている。

「よし。行くぞ」

今度は愁が私の手を引っ張り、エレベーターから降りた。
逸る気持ちが加速していく一方で、心が落ち着かない。なんだか宙に浮いた気分だ。
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