私の可愛い(?)執事くん

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ー食堂ー
私の席のそばで調理担当の執事、
司(つかさ)が控えていた。

鞄を籠に入れて椅子を引かれて席に着く。
「それではまた後ほど、失礼します」

「おはようございます、渚お嬢様。」
司は24歳。3年前からここで調理担当をしている。
赤い髪に金色の瞳。
近所に住むお兄ちゃん的な性格。
じいやの親戚の孫で陽とは幼馴染。

執事の他にメイドもいるけど全員じいやと繋がりがある。
(改めてじいやの人脈ってすごいな)

目の前に置かれているクローシュを司は持ち上げる。
スープの刺激的な香りに食欲がそそられる。
「いいにおい」
司はニコリと微笑んでから料理の説明をした。

「食後のデザートはいかがなさいますか?」
「ごめん、今日は大丈夫」
「かしこまりました」

焼きたてのクロワッサンはサクサクしている。
サラダ、スープ、オムレツ、

「司、あなたの料理はどれもおいしいよ。」
「身に余るお言葉です」
胸に手を当てて礼をする。

「ご馳走様でした」
「お粗末さまでした」
支度をして外に出ると学ラン姿の陽が待っていた。
「お待たせ」
「ではいきましょうか」

散り始めた桜並木を歩く。
「桜、もう終わっちゃうね」
「また来年があるよ」

外ではタメ口で話したいと陽に頼まれた。
万が一、陽と話してるところがクラスメイトに
聞かれても誤魔化せるために。

「その、バレてしまうと絶対にいじられてしまいますから」
「うん、陽がそうしたいならいいけど」

「今日もいつもの時間でいい?」
「うん、大丈夫」
十字路で分かれてそれぞれ学校へ。

「おはよう、渚」
下駄箱で履き替えていると名前を呼ばれて振り返る。
「おはよう、響」

私の通う星宮高校はかつて御曹司やご令嬢が通う
いわゆるエリート校。
今は多様性を重視して成績と素行が良ければ誰でも
入学できる。
それでも偏差値はかなり高く、入学してもついていけず自主退学する生徒も少なくない。

高橋 響(たかはし ひびき)は私の友達。
快活な女子で運動神経は抜群。

勉強はあまり好きじゃなくていつも赤点ギリギリ。
でもきさくだから人に好かれるタイプ。
(入試は受かったんだから一般高校よりは
頭いいんだろうな)

「ねぇ、渚。今週の土曜日空いてる?」
「なに?急に」

「勉強教えてもらおうと思って」
「多分、大丈夫だと思うけど一応聞いておく」
「うん、お願い」

階段を登って教室に行き挨拶を交わして席に着く。
授業を受けて、司の作ってくれたお弁当を食べて
午後の授業を受けて放課後。

朝に分かれた十字路で待ち合わせをして帰る。
これが日常だ。

帰宅後、
制服からルームウェアへ。
学ランから燕尾服へ着替える。
「そういえば、陽。土曜日に響がうちに来たいって
言うんだけど」
「土曜日、ですか」
燕尾服の内ポケットなら手帳を取り出す

「土曜日は特にご予定はございません」
「そう、ありがとう」

ー土曜日ー
午後1時に高橋様はいらっしゃった
「お邪魔します」
「お待ちしておりました、高橋様」
「こんにちは、執事くん」

お嬢様と俺の関係を知っているのは高橋様だけだ。
お嬢様が言うに執事がいることを周りにバレたくないらしい。

高橋様をお部屋に案内する。
「では失礼します」

陽が部屋を出たから勉強に取り掛かる。
「羨ましいな」
はずだった。
「何が?」
「執事、私の家に執事いないからさ」
「そう?」
響は口を尖らせて反論する。

「私は一般家庭育ちですので執事はいないんですー。
私も執事に甘やかされたーい」







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