いたちごっこ
お母さんは心意気の方に惚れたって言っていたけど、本当にそうなんだろうか。世の中、物好きもいるし。恋愛の趣味って人それぞれで、わからないものだから。少しだけ心配するような気持ちが芽生える。
でも、まさかね。孫と祖母くらい離れてるし、さすがにあり得ないか……と、思いながら2人をマジマジと見つめる。そしたら筒地君と目が合ってニッコリ微笑まれた。
愛想を振ってくれたんだろうけど、見ていた理由が理由なだけに気まずい。曖昧に笑い返しながら、そわそわと目を逸らす。その瞬間、後ろから盆で頭を叩かれた。
「痛……っ」
「ボサッとしてんな。早く準備しろ」
「はぁ?」
「開店に間に合わなくなるだろ」
背後から聞こえる不機嫌そうな声。恨めしい気持ちになりながら振り向くと、ふてくされた顔をした皐月と目が合った。ムスッとしちゃってメチャクチャ機嫌が悪い。しかも言うだけ言って、さっさと作業場に引っ込んでいった。
もー!何?いきなり叩いて逃げるなんて失礼すぎる。昨日の照れていた皐月はドコに行った⁉
腹が立ってしょうがなく、追いかけようと足を一歩踏み出す。しかし、仲良しキャンペーン中だったのを思い出してヤメた。帰ったら覚えておきなさいよ!の心境だ。きっと、またすぐに寝室へ行っちゃうんだろうけど――。