いたちごっこ

 うんって何だそれ。嫌じゃないって、していいのかよ。思ってもみなかった反応に心が疼く。

 そんな風に許されたら我慢できないのなんか当たり前で。半信半疑で気持ちを確かめるようにもう一回顔を近づける。本当にいいのか?って少しだけ葛藤。


 目が合い一瞬だけ躊躇する。だけど、双葉が黙って目を閉じたから迷いをかなぐり捨てて再び唇を押し当てた。


 ただもうキスだけなんて無理な話。歯止めが外れりゃ抑えなんて全く利かなくて。背中に腕を回されたのをいいことに舌まで差し込んで、欲に流さるがままに床に押し倒した。一度、触れれば熱は上がって止まず、我慢できない衝動が一気に身体の芯まで押し寄せる。

 服を脱がそうが肌に触れようが、双葉は嫌がりもしなければ止めもしなかった。むしろ、ちょっと甘えるような態度で、ずっと恥ずかしそうにしてた。

 あぁ、お前こういうとき、そんな顔をするのな…って性懲りもなく過去にちょっとだけ嫉妬。それにプラスして、満たされるような気持ちと言葉じゃ表せない愛しさが込み上げる。


 「お前、俺のことが好きなの?」と聞けば、双葉は「好き、かも」と頷いた。


 かも、って微妙な言い回しだな。どっちだよって言いたい。でも、触れた温もりが重なった視線がお互いを好きだと言っている。


 だから俺も双葉に「皐月は?」と聞き返されて「好きなんじゃねーの」と言った。


 曖昧な言い回しだったのに双葉は全て理解したような顔で照れてる。


 ほんと、とことん素直じゃねぇ。本当はお互い好きなくせに。どこまでいっても小憎たらしく抓り愛。

 それでも少しは先に進んだ、いたちごっこ――。
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