黒を以て白を制す
しかも人はそういう人間が吐いた嘘を簡単に信じ込む。詐欺師に引っ掛かるようなもの。人を騙すことに熟れた人間に嘘と事実を交ぜて話されると何もかも事実のように思えるのだ。
もうそれこそ少しの要素が見えた途端それが答えであるかのように思い込む。それが勘違いであったとしてもだ。欠片でも納得する部分があるとその人の中ではそれが事実になってしまう。
そう思ったら人が心で描く他人の人物像なんてもんは、いい加減で自分勝手なものだなと思う。
“この人は優しそう”ってイメージを持つと優しい部分が目につくようになるし。“意地悪そうだ”と思うと陰険な部分が目につくようになる。
イメージ通りの人にしたい、と言った方が正しいのかも知れない。本当の性格を知る前に、まずは自分が心に描いたキャラクターとの共通点を探してしまうのだ。
だから優しそうな人の優しい部分を見ると、やっぱりイメージ通りの人だったのね、と強烈に思うし、納得する。自分が作り上げた人物像と相手の行動が一致すると、それが偽物であろうと本物に思えるから。
ちなみにそれらが真逆に動いた場合、悪い方向に動けば“そんな人だとは思わなかった”と落胆した発言に繋がり、良い方向に動くと“ギャップ”に繋がる。
最初に己が感じたものはただの勘違いだったと思い込み、“実際はこんな人”ってな感じで人物像を変えてしまうのだ。
確かにその人の一部分かも知れないのに。