黒を以て白を制す


 つまり他人像なんてもんは自分が作り出したキャラクター像を実際の人物に当て嵌めているだけの、勝手なモノに過ぎないのである。


 しかし、それが人間関係に強烈に左右するからバカには出来ない。実際に左右されている人間、それが私。安久谷桑子だ。


 「そんなゴミみたいな人生で生きてて楽しい?あたしだったら無理」

 「うっ、」

 「あたし、お姉ちゃんみたいにはなりたくないわ。可哀想と思うようなことばっかりで、羨ましいと思えることが何1つない」


 呆然とする私に言うだけ言って、妹はバイト先のカフェに向かって歩いていく。


 姉の人生を完全否定ですか……。さすがにショックだ。傷ついた。めちゃくちゃ鋭く研いだ切れ味抜群の日本刀で心をグサッと切られたみたい。


 それでも妹には悪気がないんだろう。思ったことを何も考えずに言っただけで。だとしたら怒るのもちょっとな、と思う。悪気がないならいい。


 それに本当のことだ。自分でも思うよ。ゴミみたいな人生だって。妹よりも私の方が思ってる。


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