黒を以て白を制す
「安久谷さんもなー。気が強すぎるって言うか正義感が強すぎる」
「……そう?」
「そうそう。真面目すぎだし、お人好しすぎなんだよ」
「うん」
「律儀に1人で戦う必要はないんだって。要は解らせられればいいんだから」
「効率よく?」
「使える駒は使う。悪意を向けてくる相手にまで情けを掛けてやる必要はないと思うよ。俺は」
真顔で話す伊那君の顔を見つめる。いつも温厚な伊那君がやけにクールだ。にこりとも笑わずにパソコンのキーボードを叩いている。
珍しい……。何か怒ってる?それとも怒られてるんだろうか。ビックリして目が点。心の中が大パニックだ。普段とは違う雰囲気の伊那君に動揺しまくり。ゴクリと喉まで鳴らす。
ここから更に不穏な空気になって、終いにダーク伊那君まで出てきたらどうしよう……。
いや、それはそれで見たい気もする。装備品が全て黒に変わった闇属性の伊那君はちょっと見たい。
いつもは光を放つ伊那君が闇のオーラを放ってるなんてプレミア。これで私が白い光を放ったら闇と光のプレミア化学反応で凄い効果が現れるかも知れない。もうそれこそ、萌の上に隕石を落とせるくらいの。
「……つまり、もっと賢く行けってこと?」
「ん、まぁ、そんな感じ。真正面から行くより横から行く方が上手く行くときもあるし」
気持ちを切り替えて話を続けた私に伊那君は言う。まぁ、確かに本人が真正面から言うより第三者から言って貰った方が丸く収まる時もある。
1人が反対意見を言うと『あれ?自分の意見は間違ってるのか?』と一瞬でも考えるし、その一瞬の疑問が起爆剤となって少し流れが変わってくるからだ。
要はやりづらくなる。