黒を以て白を制す
“自分は正しい”と思いながらやるのと“自分は間違ってるかも知れない”と思いながらやるのとでは全然違う。
ノリノリでやるか、少し後ろめたく感じながらやるかの違い。これが結構大きい。続けても徐々に楽しくなくなってくる。
それに何より本人が言ったら相手が反発して意固地になる可能性が高い。従ったら負け、ヤメたら負け、負けて堪るもんかと相手の心の内に謎な勝敗ルールが出来上がり、終息するどころか余計にエスカレートする。
本当に意味のない。負けん気が強いのはいいことだが、もっと別のことに活かせよ。いいレベルまでいけるぜ、と意固地になっている人を見ると時々思う。
本人らは至って真剣にスポーツでもやるように戦っているが、嫌いな人間に構うことに時間を費やすのなんて勿体ない。そんなの“費やす”どころか“奪われる”だ。
人生なんて決められた時間しかないのに構うだけ無駄。それなら自分の人生を照らせる楽しい事に時間を費やす方が余程いい。年なんて新幹線が通り過ぎていくような速さで過ぎ去っていくんだから。
だからこそ、嫌がらせをされると『構ってくるな』と余計に思う。それこそ“あっち行け”だ。あっち行って楽しいことをやって自分の人生を最高レベルにまで輝かせてこい。そしてキラキラになって戻ってこいと思う。
まぁ、とにかく以上の点も踏まえると、伊那君の言う通り横から口を挟んで貰う方が早いし、正しいと思う。だけど……。
「それじゃ根本的な問題を解決出来なくない?」
終息はしたって問題は解消されないんじゃないかと思う。皆、言われたから止めただけで、スッキリとする訳じゃない。モヤモヤした気持ちが残る気がする。
「する必要ないよ。どうせ、腹立ってる原因の種なんてほんと小さな米粒みたいな事だろうから」
しかし、伊那君はそんなのどうだっていいじゃんと思うらしい。私に視線を向けると平然とした顔でサラリと言った。